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小さなビルの2階が隆行の職場だ。
毎日どこからともなく送られてくる膨大なデータを入力したり、チェックしたりするのが主な仕事だった。
何のデータかは知らない。
自分がしている作業が何の役に立つのかもよく分かっていない。
契約社員などアルバイトに毛が生えたようなものだ。自分が知る必要は無いのだろう。別に構わない。特に興味も無いからだ。
「風間君。なんだか疲れてない? 大丈夫?」
「いえ、大丈夫です。ただの寝不足ですから……」
また言われてしまった。よほど疲れた顔をしているらしい。
「夜更かしはほどほどにしなさいよ」
「……いや、朝なんですよ。工事の音がうるさくて」
「ふーん。そうなんだ……」
立花主任は何かと気に掛けてくれる優しい女性だ。すらりとしたスタイルでパンツスーツがよく似合ってる。いかにも仕事が出来そうでかっこいい。
「あの辺り工事なんてしてたかしら……」
「ずっとやってますよ。道路沿いの工事現場だと思いますけど……」
この職場からはさすがに騒音は聞こえないのか、不思議そうに隆行を見ていた。
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