2/5
前へ
/30ページ
次へ
 小さなビルの2階が隆行の職場だ。  毎日どこからともなく送られてくる膨大なデータを入力したり、チェックしたりするのが主な仕事だった。  何のデータかは知らない。  自分がしている作業が何の役に立つのかもよく分かっていない。  契約社員などアルバイトに毛が生えたようなものだ。自分が知る必要は無いのだろう。別に構わない。特に興味も無いからだ。 「風間君。なんだか疲れてない? 大丈夫?」 「いえ、大丈夫です。ただの寝不足ですから……」  また言われてしまった。よほど疲れた顔をしているらしい。 「夜更かしはほどほどにしなさいよ」 「……いや、朝なんですよ。工事の音がうるさくて」 「ふーん。そうなんだ……」  立花(たちばな)主任は何かと気に掛けてくれる優しい女性だ。すらりとしたスタイルでパンツスーツがよく似合ってる。いかにも仕事が出来そうでかっこいい。 「あの辺り工事なんてしてたかしら……」 「ずっとやってますよ。道路沿いの工事現場だと思いますけど……」  この職場からはさすがに騒音は聞こえないのか、不思議そうに隆行を見ていた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加