花が舞う

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 私も、「楽しかったんだなー」と思いながら、喜色満面の母を見るのは楽しかった。  これだったら、この間からおねだりしているスマホ買い替えもスムーズに行くかもしれない、と思っていた。  しかし、そんな母の喜色満面の笑顔をぶちこわしてくれたのが、父だった。 『どこに行っていたんだ、お前は』  母と私が帰るなり、父はそう言い放った。 『家族のことも、放っておいて』 『夕飯の用意はしてあったでしょ? 今日は安浦(やすうら)君に誘われて剣道の練習に行くって言っていたじゃない』 『俺は聞いていない!』 『言ったわよ、昨日。まちがいなく、言いました』 『言っていたな、おふくろ』  玄関先で話していた父と母の会話を聞いた兄が、通りがかりにそんなことを言う。  おいおいおいおい、と私は兄に突っ込みたかった。  そんなことをしたら、意地っ張りの父は、意固地になってしまう。
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