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『まあ、そのうち終わるって』
兄はそう言うと、くいっと指で私に台所に行くように示した。
私としても、お腹は減っているし、玄関で父と母がケンカをしている声を聞きたくはなかった。
『まあ、親父の気持ちもわかるけどな』
私と一緒に家の奥に入りながら、兄は言った。
『え? 単なる難癖じゃない』
だけど、私には兄の言葉の意味が全然わからなかった。
父は、自分はよく出かけていた。寄り会だ、同じ仕事の集まりだと、毎週のように飲みに出かけているくせに、めずらしく母が出かけようとすると、難癖をつける。
はっきり言って、性格が悪い、と私は思っていた。
でも、兄は私の言葉を聞くと、
『だから、お前は彼氏ができないんだよ』
と失礼極まりない発言をしてくださった。
『微妙な男心がわかっていないな』
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