エピローグ

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 淳が小さく息を吐くのが聞こえた。 「いや、まだ付き合う。由羽は恭二のことを想い過ぎている」 「……別にいいよね。初恋って引き摺るものなんでしょ? 特に私は遅い初恋だったんだから、好きなだけ引き摺らせてよ」 「そうか。なら、好きなだけ引き摺っていいから、俺と付き合おう」 「無理。引き摺っている間は付き合えない」 「ああ、知っている。言ってみただけだ」  まだまだ恭二を想い続けているしかない状況だろう、と自分では覚悟していた。だから、今は他の誰のことも考えたくない。  それでも、私の口からポンポンと言葉が飛び出す。  淳と一緒にいると、会話への躊躇が減っているのが分かる。少しずつ、自分を出せているのかもしれない。  周人を含む歴代の彼氏とは、毎日一緒にいても自分の言葉を発するのを躊躇することが大きかった。それは多分、死者の声が気になるからだけど。  死者のことが分かる人、そういう認識が一緒にいるのを楽にするのかもしれない。  恭二もそうだった。  だけど、恋愛感情はまだ別だろう。  私は淳の顔を見た。不意打ちだったのか、淳が赤面して「急にこっちを見るな」と不貞腐れる。
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