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「なんなんだよ、おまえ。何がそんなに面倒くせえの? 折角だから、一緒に何か買おうって言っているだけじゃん」
連休最終日に来てしまった激混みの水族館で、周人が目を吊り上げて私を見下ろした。
周人が比較的短気なのは知っているけど、私に対しては滅多に怒ったことは無かった。
だから、彼が怒っている状態に少し驚きもあった。だけど、周人は1日の疲れと激混みのショップを前にイライラしているのであって、私が面倒くさいと思っている理由と一致しているようにも思えた。
とは言え、私にはそれ以上に余計な雑音が耳に響いていて、それを無視するので精一杯で、周人の言葉に集中して耳を傾けるのがやっとだったから、周人の思惑まで正確に考えることが出来ている自信は無かった。
「由羽は信二と小早川がペアで買ったストラップ見て『いいなあ』って言っていたんだろ?」
ああ、そうか。周人は私のために、と思って買い物をしようとしているのか。でも、友達のペアグッズを羨ましがるなんて社交辞令だったのに。
「周人だって、疲れているからイラついているんでしょ? 私もあのショップの中に入るのはうんざりなの。もういいじゃん」
私の言葉に余計に怒ってしまったようで、睨むようにこちらを一度見ると後ろを向いてしまった。
「おまえって、いつもそうだよな」
ため息交じりに周人が低い声で呟いた。
ああ、これは終わったのかもしれない。私は咄嗟にそう思った。
だって、いつものパターンだから。
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