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「まあ、キミは色々と敏感だよね。それだけは分かる。淳は仕事モードで集中していると色々と分かるけど、気を抜いている時は意外と鈍感な奴だからね。ああいう奴と一緒にいたら、キミも少しは気が抜けるようになるかもしれないよ」
そう言いながら、今日は綺麗なピンクのノンアルコールカクテルをシェーカーから注ぐと、フルーツを飾り付けて私の前に置いた。
これは、この人の予感とかそんなものなのか、リラと同じで単に淳を応援しているだけなのか。
どちらにしても、今はまだ何も考えられない。
だけど、もう既に1週間以上も淳に付き合わせているのは事実で、それでもまだアパートに帰ると恭二を思い出すのも事実で……。
「可愛いカクテルだな。由羽に似合うじゃないか」
戻って来た淳がそんな言葉を言うのが意外で、思わす目を丸くして振り向いた。
淳も自分の言葉がらしくないと気付いたのか、いつものように赤面して「そんな顔をするな。思ったことを言っただけだ」と顔を背けた。
暫くはマスターと3人で他愛のない話をしていたけど、何人かお客さんが増えて、マスターは仕事に戻って行った。
「あのね、淳さん。そろそろ、いいかな。付き合ってくれなくても」
カクテルの中に入っている、サイコロ型のフルーツをスプーンですくうことに集中して、淳の顔は見なかった。
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