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この近衛騎士団で同期として顔を合わせる前から、俺はアクスとは面識があった。まだ騎士となる前の任地で、所属していた部隊が一緒だったことがあったのだ。
だからこそ、ヤツの強さも、その人柄も、わりと知っている。
――根っから女好きなアイツにとっちゃあ、そりゃー耐えられなかっただろうさ。
いかに団長とはいえ、所詮ただのオッサンだしな。相手がそれでは勃つものも勃たない、ってーモンだ。
確かにアクスは、団長好みの男だったかもしれない。――デカくてゴツくて、いかにも男! ってタイプだし、女顔の美形でも無いし、誰に対してもそう簡単には服従なんてしない意志の強さも持っている。
しかし、それが徒となってしまったようだ。
部屋に呼ばれ、小姓としての夜の勤めを強要され、やはりどうしても受け入れられなかったのだろう、団長の急所に噛み付いて怪我を負わせてしまったらしい。
それで、アッサリ左遷だ。
しかも左遷先が、よりにもよって『軍人の墓場』なんていう二つ名のあるカンザリア要塞島。仮にも騎士であるものを、そんな場所へ送るだなんて……徹底的に潰してやるとばかりの処遇じゃないか。
「本来、頑として突っ込む側だった人に、逆に突っ込んじゃったんだよ君は? そんなもの、噂にならないハズがないじゃないか」
「…てか、何でそれが知られてんの? 別に俺、誰にも言った覚えなんて無ェんだけど」
「そんなの、部屋に入れば丸わかりでしょーが」
翌朝、俺ではない別の小姓が、団長を起こしに行って発見してしまったのだそうだ。その、ケツ穴ぐっじゅぐじゅにして寝台の上に全裸でぐったり伸びていた姿を。しかも、腰ガックガクで立ち上がれもしなかったという有様では、何があったからこうなったのかも一目瞭然、てところか。
その晩、俺が団長のもとに呼ばれたことは夜番の担当が知っているところであるし、そうなれば当然、それをした相手は俺だと、簡単に想像もつくだろうさ。
そこまで言われてしまえば、噂になるのも仕方ないことかもしれないな。
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