【前編】

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「退屈しのぎになってくれるんなら、たとえ団長のケツだって喜んで掘ってやるよ」  言ってやったら、「やっぱりか」と、もう何度目かもわからないタメ息を、これみよがしに深々とワーズが吐き出す。 「さすがに最後まではヤっちゃいないよね? という、僕の心底からの希望的観測を返せ」 「知るか、そんなことまで」 「ああ、もう……今度から団長を見かけるたび、これがセルマに掘られた男、とか思っちゃうじゃん……」 「好きに思えよ。――そりゃーもう、ずっこんばっこん、ガッツリ掘らせていただきましたとも」 「聞きたくもないし!」  再びツッコミ裏手パンチを繰り出してきたその手で、ワーズが自分の額を覆うや、もうヤダ…などと小声で呟きながら天井を振り仰ぐ。――オーバーだな、やることが。 「何が悲しくて男同士のずっこんばっこんとか、聞かなけりゃならないの……!」 「なんだよ、自分から話振ってきたくせに」 「うるさいよ、諸悪の根源」 「あ、でも、誤解すんなよ? 別に俺、団長の身体になんざ、コレッポッチさえもハマっちゃいねーから。ただの性欲処理に使ってやっただけで……」 「聞いてないよ、そんなことまで!」  ああもうセルマがいぢめるー…と、終いにはくの字に身体を折り曲げて頭を抱え込んでしまったワーズの背を、よしよしとばかりに、俺は軽くさすってやった。 「長い人生、そりゃ色々とあるよなあ……」 「そんな他人事みたいに……」  恨みがましくこちらを向いた彼は、もはや涙目で、唇を軽く尖らせてみせた。 「そうでなくても、君みたいな美形は厄介事を引き寄せやすいっていうのに……これ以上、自分から増やしてどーすんのさ?」
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