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ワーズが心配してくれる気持ちは有り難いと思う。素直に思う。
俺みたいな女顔で見た目ナヨっちい美形は、軍なんかじゃ常に“公衆便所”扱いされ易いからな。コイツが心配してくれているのも、そこなのだろう。
実際、入団当初の俺が誰の小姓にも付かなかったのは、そういう意味だったのではないだろうかと、薄々予想も付いている。――扱い易そうな美形は皆で共有しましょう、っていう暗黙の了解。…みたいな?
じゃなきゃ、こんなにも美しい俺が誰のものにもならないなんて、あるはずもないだろう。これまで、どんだけの上官に囲われてきたと思ってるんだ。
だから俺は、見た目ほどそうヤワじゃない。
襲いかかってくるヤツがいれば、あしらって一緒に楽しんでしまえる余裕もあるし。どうしても気が乗らなければ、叩きのめせば済むことだ。着痩せする見た目の所為で大抵が俺をナメてかかってくるから、返り討ちにするのも簡単だったらない。――仮にも騎士にまでなる人間が鍛えてないハズもないだろうに。世の中ホント馬鹿ばっかりだ。
「大いに結構じゃねーか。厄介事くらい、ヘでもねーよ」
「…そうだろうね。君ならね」
もはや諦めの境地に達したらしいワーズが、はは…と乾いた笑いを浮かべつつ、それを返す。
「だって君、今や皆から何て呼ばれてるか知ってる?」
今回のコレで決定的だよね、と、言ってそれを告げたのだ。
「『魔性の男』エイス・セルマ。――ピッタリじゃない? 今の君に」
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