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「一体、何があったのさ? ここ数日、ずっとそんなカンジじゃない」
「『そんなカンジ』とは……変顔をしているにも関わらず滲み出る美しさを隠し切れない俺様を称えて言っての言葉だろうな?」
「だから、そーやって何くれとつまんないことで人に絡んでくるくらい、どんな気に入らないことがあったってーの?」
「気に入らないこと……―――」
――『ご褒美くらいはくれてやるぞ』
途端、耳の奥に甦ってきたそのセリフに、思わず「うがあああああ!」と俺は絶叫して両手を頭に座り込んでいた。
「え!? なに、何なの!? いきなりどうしたのセルマ!?」
横でビクッと俺から一歩後退したワーズの様子なんざ、既に知ったこっちゃなかった。気にできる余裕もなかった。
思い出すだに……ただ屈辱でハラワタが煮えくりかえる。
――あンのヤロウ……!
チクショウチクショウチクショウふざけんなコノヤロウ人をガキ扱いしやがって今に見てやがれ絶対テメエの鼻を明かして泣かせて終いにはケツでヒイヒイ言わせてやるからなあの腐れ×××―――!
思い付く限りの悪口雑言を頭の中で繰り返し唱え続け、口許からフフフフフと不気味な笑いまで洩らす俺のことを、その場にいた全員が遠巻きに見ていたなんて、当然、全くもって気付いちゃーいなかった。
「痛んでいるとは思ってたけど……」
「病んだね……」
「あれは病んでるね……」
「残念ながら重症すぎるな……」
「ホント残念すぎる……」
ワーズとグラッドが、俺を見ながら頭を突き合わせて、そうヒソヒソと囁いていたとかいなかったとか―――。
とにかく諸悪の根源は、あの副団長なのだ―――!
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