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「いや、違う! 今の間違い! そんなことは一切コレッポッチも思ってないから!」
焦って慌てて誤魔化すが、頬に集まった熱だけは簡単に引いてくれない。
「なんていうか、つまり、言いたかったのは、だから……!」
そんなことを言いながら、あれ俺が言いたいことってなんだろう? と困って、結局は言葉に詰まるしか出来ない。
赤面し無言で口だけぱくぱくさせる俺の頭を、まるで子供をよしよしとあやすような仕草で、おもむろに副団長の手が撫でた。
「安心しろ。おまえのことを、そんなふうには見ていない」
「…でしょうね」
なんでいつもコイツは俺を子供扱いするんだ、と、そこに少しだけムカッ腹は立ったけれど。
それでも今は何故か、そのケンカを買ってやろうという気などは起こらなかった。
頭を撫でてくれる手が、思いのほか気持ちよく思えたからだろうか。
「なんというか……おまえは、私の弟に何となく似ているからな。とてもじゃないが、手を出す気にはなれない」
「弟……?」
「正確に言うなら“友人”なのだが……幼い頃からの付き合いだから、もはや“弟”でしか無くてな」
「ふうん……それでか」
「『それで』とは……?」
「アンタの、俺に対する子供扱い」
この手とか、と頭の上の手を指さしてやると、「ああ、すまない」と、思いのほかアッサリ引いてくれた。
しかし、続けられた言葉が、またいただけない。
「つい子供と動物を見るとやってしまうんだ。これはもう性分だな」
「――なんだって……?」
その瞬間、カチーンときて頭のどこかのスイッチが入る。
「俺の、どこが子供だと……?」
「子供というか……そうだな、どちらかといえば生意気な仔猫だな。すぐに毛を逆立てて威嚇してきて、そのくせ構ってもらいたがる。――本当に、そういうところは弟にそっくりだな、おまえは」
――よりにもよって人間通り越して猫扱いとか、ふざけんな……!?
それを、冗談ぽくでもなく、あくまで真面目なカオして言ってのけてくれちゃってるところからして、ものすごく腹立たしいったらないではないか。
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