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反省文なんざ、どうせ出させたところで中身なんざ読まないだろうと高を括っていたというのに。
「二度目は無いぞ。次に同じことをやったら、問答無用で減俸だ」
「は、ははーっ!」
さすがに減俸食らうのはカンベンだと、突き戻された提出済みの反省文――に見せかけたシチューのレシピ――を、頭を低くして平に平に俺は受け取った。
「まったく……そういう他人をナメきった態度が改善されれば、おまえももう少しくらいは生き易いだろうにな」
「余計なお世話ですー」
最後の悪足掻きの如く、そんな生意気な返答を返してやるも。
それについては副団長も何の言及をしてくることもなく、ただ軽く鼻で笑われただけだった。――ちくしょうめ。
反省文の重圧によろりとしながらも、「じゃあ、そういうことで」と席を立った俺の背中を、ふいに副団長が呼び止める。
「とりあえず、今日の話は他言無用で頼むぞ」
「え……?」
「私が、おまえを右腕にと望んでいること。――まあ、言うまでもなく、おまえは自分からぺらぺら他人に喋ったりしないだろうが」
そうやって微笑んだ副団長の姿に、少しだけ申し訳ない気持ちを覚えた。
――結局、俺はそれに何も返せていないもんな……。
だから、せめてもの罪悪感から、「言わないですよ」と、俺は返してやった。
「言ったら、俺のこともバラされるんでしょ?」
「…ああ、それもあったな」
頭いいなおまえは、と、ふいに浮かべられた満面の笑顔に、不覚にもドキッとしてしまった。
普段ほとんど笑わない人間の笑顔って、破壊力すげえよ。ハンパねえよ。なんだその最終兵器まがいの威力。
「…そういうことだから、おあいこ、ってことでひとつ」
「ああ、そうだな。おあいこ、ということにしておこうか」
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