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「――つーワケで、これは返してきてください!」
言うや、俺は琥珀の耳飾りの入った小箱を、その眼前に突き付けた。――ファランドルフ副団長へ。
「つか、なんでそもそもリュシェルフィーダがパシリにされてくるワケだよ!?」
またアンタ何か企んでんの!? と、がなり立てた俺を呆れたように見やり、執務机越しに副団長が「失礼な」と軽く鼻を鳴らした。
「私は、公にしたくはないという、おまえの意向をお伝えしただけだ。だから、あちらも気を遣って、私を通すよりは同僚に託す方が目立たないだろうと、それでリュシェルフィーダを通したのではないのか?」
「気の遣い方が、根本的に間違ってるっっ……!」
これだから、己の立場も顧みず平民と駆け落ちするような無計画男は……頭のネジ、どっか緩んでブッ飛んでんじゃねーか!? そんな脳内お花畑野郎なんかを、よりにもよって当主なんかに据えておいて大丈夫なのかシュバルティエ家!! まあ俺が心配してやるこっちゃ無ェけどなっ!!
「まあ、もともとあの御仁に、おまえのことを隠しておきたい意志は無かったようだったしな。むしろ、誰彼かまわず自慢してやりたいくらいの勢いだった、それくらい喜んでいた」
あくまでも他人事、といった風に、何事でもなく副団長は言う。――ホント他人事だと思いやがって恥ずかしいこと言うんじゃねえ……!
「この琥珀も、父親としておまえの無事を祈っているぞという、心を込めた贈り物ではないのか? いいじゃないか、別に返さなくても。せっかくだから付けてやったらどうだ」
「馬鹿言うな!」
思わず相手が上官だと言うことも忘れて一喝してしまった。
「んなことしたら、シュバルティエの名札付けて歩いてるようなモンじゃねーか! 頼むからカンベンしてくれ!」
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