【後編】

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 ワーズとグラッドから聞いたところによれば、この日の王都の賑わいは、それはそれは大層なものとなるのだそうな。  王宮前の広場が祭りの主会場となるのだが、そこに至るまでの大きな目抜き通りを、まず主役である未婚の乙女たちが、揃いの白い服と花冠という装いで、まるで巫女のように粛々と練り歩き。その後を独身の若者たちが、きらびやかな衣装で踊りながら、時には芸なども披露しながら、道行く人々の目を楽しませて続く。  広場に着いたら後はお定まりの踊りの場となるが、そこでも色々と催し物があったり、見ているだけでも楽しめるような趣向が凝らされているのだという。  また、広場の周りや目抜き通り沿いにはズラリと露店が並び、それこそ、この日のためだけに来たという外国の商人もいるということだから、お馴染みのものから珍しい品物まで、多種多様のものがよりどりみどりと揃っているのだそうだ。あえて祭りに参加せずとも、それを見て歩くだけで充分に楽しめるに違いない。勿論、祭りには付き物の飲食類を商う露店も充実しているという。  いいなー俺も行ってみたいなー見物したいなー名物いろいろ食いたいなー…と、ずいぶん前から何度も何度も言っていたというのに。  ――よりにもよって俺だけ行けないとか、それはないだろう。  泣きそうだ、と思いながら、俺は深々とタメ息を吐く。  近衛騎士団でも、やはり夏至祭ともなれば特別なお目こぼしも多いらしく、さすがに全員は無理だが、なるべく皆が祭りを楽しめるよう、希望者には出来る限り休日が与えられ、休日が取れない者にも時間交代制で半休が与えられるようになっていた。  ワーズとグラッドも、所詮は新米だから居ても居なくても大丈夫だというヌルい役得でもあったのだろうか、丸々一日の休日をもらって、ほくほく笑顔で『行ってくるねー!』と、朝も早くから俺だけ置いて出かけていった。
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