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「ちくしょう……俺も祭り見たかったよぅ……せっかく、この日のためにお小遣い貯めてたのに……」
「仕方ないだろう、そういつまでも拗ねるな」
子供か! と横からピシャリとニベもない言葉を叩き付けてくれやがったのは、リュシェルフィーダ。
俺と同じく、コイツも半休すら貰えなかった居残り組である。
『淋しいと死んじゃう』俺は、一人で部屋に居てもつまらないし、今日は騎士団内のどこに行ってもほとんど人影は無いし、仕方なく暇潰しにコイツの部屋に居座りに来ていたのである。
それに、副団長から『当日までにリュシェルフィーダから夜会のマナーでも叩き込んでもらえ』という厳命も下されていたことだしな。――ああホント、極めて気が進まないったらないぜ。
王都の夏至祭は、あくまでも平民たちのための祭り。
貴族たちには、この王宮で開かれる夜会こそが楽しみ、だといっても、きっと過言ではないのだろう。なにせ、これまで夜会なんざ腐るほど行き尽くしているだろうこのリュシェルフィーダ坊っちゃんの口から『あんなにも贅を尽くした夜会など、そうは見られないな』などと言わせてしまうくらいなのだから、これは相当ではないか。
更には、まがりなりにも王宮主催の夜会であれば、その出席者たるや、国王を筆頭に錚々たる面々ばかりという。
そんな絢爛豪華きわまりない場所なんかに、血統書だけは付いていても平民育ちド真ん中という質素で貧乏性な俺までもが、参加しなければならないなんて……一体どんな拷問だコンチクショウめ。
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