【後編】

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 ――それにしても、慣れてんなあコイツら……。  俺が、こんなにも窮屈な想いをしているというのに。団長も副団長もリュシェルフィーダでさえ、ケロッと涼しい顔をしている。しかも団長と副団長に至っては、俺たち新米と同じ装いに加えて、勲章やら階級章やら、これまた重そうな徽章の類が余計にじゃらじゃら付けられているというのに、だ。  まあ…ぼちぼち会場に集まり始めている周囲の貴族を眺めれば、どれも似たように堅苦しい格好しているしな。やはり貴族の出である彼らにとっちゃ、それなりに当然なのだろう。こんな重さも窮屈さも。  そこに加えて、やはり近衛騎士って美形ばっかなんだなーと、こんな時だが改めて納得してしまう。  この俺の美貌が突出しているのはもはや言うに及ばないが、でも決して俺だけの所為ではなく、こう固まって立つ俺たち四人それぞれが、周囲からかなりの注目を集めていた。特に女性から。――それも当然だろう、こうやってカッチリした正装に身を包めば、普段に比べて男前度合いも五割増しくらいにはなっているはずだし、何よりも、周囲の有象無象どもとは美形度合いも段違いだからな。  近衛騎士団の中では、団長も副団長もリュシェルフィーダも、そこまで目立って美形だと思ったことなど無かったが……比べる基準が違うんだよ、周りが美形ばかりだからコイツらが埋もれてしまってるだけなんだよ、と。ここへ来てそれがよくわかった。  団長なんて、中身はスケベで男好きでどーしようもない変態だが、黙って立ってさえいれば、若き日の色男ぶりが偲ばれる、いぶし銀なくらい渋いナイスミドルだし。  副団長は、その大柄な逞しい体躯に似合う、わりとハッキリした顔立ちの、いかにも男らしい精悍な男前で。  リュシェルフィーダは、珍しい青い瞳の所為もあってか、どこか神秘的にさえ見える雰囲気を湛えた影のある美青年、ってところだろうか。
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