【後編】

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 そのうえ、四人中三人が、よりにもよって三公爵家の直系だ。――何も言わなくても、揃って紅玉と青玉と琥珀の耳飾りなんぞ付けてれば……その時点で、もはやコッチからバラしてるよーなモンだろう。  ――これは目立つね……そりゃー目立たないハズなんてないよねっっ……!  だから、早々に俺は諦めた。当初、ボロが出ないようにできるだけひっそりとしていよう…なんてことも考えてはいたが、こりゃダメだ。  どう何をしようと、目立つモンは目立つ! ならば、常に他人に見られていること前提で動くしかない!  そう腹を括り、俺は日暮れまでの途轍もない待ち時間を何とか乗り切ろうとした。  途中、俺以外の三人が、顔見知りなのだろう人間から何だかんだ話しかけられては、一緒に居る俺の方にも何くれと話が振られたりもしたが……もはや何て言って乗り切ったのかも憶えていない。  気が付けば、三公爵家の当主も既に姿を見せており、その場に居た皆が国王陛下のご来場を今か今かと待ち構えているところだった。――国王が来なきゃ、始まるモンも始まらねーしな。 「――大丈夫か、セルマ? 顔色がよくないが……」  こちらを振り返った副団長から、気遣わしげに耳元に囁かれる。 「キツイだろうが、もうしばらく辛抱してくれ。王と公爵たちに挨拶を終えたら解放してやるから」 「大丈夫です」  無理やりに笑ってみせると、それで少しは副団長も安心したようだ。軽く笑みを浮かべて俺から離れると、また団長の隣りに控える。 「…俺、そんなにヤバそうな顔色してる?」  こっそり隣に立つリュシェルフィーダに訊いてみたところ、即「かなりな」と返された。――やべ、ホントかよ。  思わず両手でピシャリと自分の頬を叩くと、改めてコッソリ気を引き締める。  ――これは任務だ、近衛騎士としての任務なんだ……!  そう自己暗示でもかけておけば、少しくらい堂々とした態度も出来るだろう。
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