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「よく来た、今夜は楽しんでいくといい」
まだ若々しい張りのある国王の声が投げかけられる。
「国王陛下には、御機嫌うるわしゅう―――」
俺たちを代表して、団長が挨拶の口上を述べてゆく。
それが終わり、まさにお約束のごとく国王が「其方らの忠誠に心より感謝する」と応えて、その一連の流れがひととおり済んでから。
「しかし喜ばしいことだな」と、まるで世間話でも語られるかのような気軽さで、王が団長へと向かい言葉を下された。
「近衛騎士団に、同時期に三公爵家の者が揃うとは。従える其方も、さぞかし鼻が高いであろう」
「はっ! これこそ身に余る喜びと感じております」
嘘つけよ。…と、表情には出さないようにしながら、内心ケッとばかりに扱き下ろす。
――部下に三公爵家が揃ってる、なんて……『身に余る喜び』どころか、『身を蝕むストレス』だろうがよ。
ぶっちゃけ、本当にやり難いことこのうえないに違いない。団長も、それなりに良い家の出ではあるのだろうが、それでも三公爵家、それも直系の出である者なんかには、そう無下にもできず気を遣わざるを得ないだろう。実際、俺に対しても、この出自が発覚して以来、まさに腫れ物にでも触るかのような扱いとなり、早々に小姓から外されて内勤へと回された。――まあ、リュシェルフィーダもそうだが、良家の人間は最初から小姓なんぞに付かず事務方など内向きの仕事に回されるのが当然だからな、それはそれで否やは無いんだけどさ。
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