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「それと……クロウリッドといったかな、リュシェルフィーダ家の騎士は? 其方とも久しぶりだ。前に会った時は私の腰ほどの背丈しか無かったが、実に立派になったものだ」
「憶えていてくださって光栄に存じます」
ソツなく応えるリュシェルフィーダを眺めて満足そうに頷いた王は、「これからもより一層、励むがよい」と返し、そして流した視線を、俺の上で止めた。
「さて……シュバルティエ公爵、其方の息子を紹介してくれぬか?」
俺の上に視線を留めたまま、傍らの父の方に話を振る。
「はい、陛下。息子のエイシェルにございます。直に御挨拶をさせていただいても?」
「もちろん許そう」
「有り難う存じます。――エイシェル、面をあげなさい」
伏せていた顔を上げると、同時に父から「陛下に御挨拶を」と命じる声が投げられる。
緊張する顔の筋肉を総動員させてニコヤカ~な笑みを浮かべてみせると、改めて真正面から陛下を見上げた。
「エイシェル・セルマ・シュバルティエと申します。今後とも、どうぞお見知りおきを」
そして、言うや再び礼をとって顔を伏せる。
「綺麗な琥珀色の瞳だ。さすが其方の血筋だな、シュバルティエ公爵。琥珀の宝玉も良く似合っている」
頭の上から、降ってくる陛下の声。
「それに、なんとも涼やかに美しき男ではないか。――アレクセイ、其方の弟分にも、よく似ていると思わぬか?」
なんだか含みありげに付け加えられた、その最後の言葉に応えた副団長の「左様ですね」という多くを語らない返答が、どことなく強張っていたようにも聞こえたのは……俺の気の所為だろうか?
「そういえばシュバルティエ公爵、息子に会うのは二十年ぶりだということだったな」
「ええ、ずっと死んだものだと思っておりました。それが生きていて、しかも、こんなに立派に成長して現われてくれるとは……」
言いながら目がしらを押さえ、声にまで涙が混じる。――よりにもよって王の御前で親馬鹿とかやめてくださいねー。こっちが居たたまれなくなるんだよ、この脳味噌お花畑野郎め。
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