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団長が戻ってくるのを待って、お開きになる前に、俺たちは夜会の場から引き揚げることになった。
自分の屋敷に戻るべく馬車に乗り込んで去った団長を見送って、ようやく肩の力が抜ける。
「私も、今日はこのまま帰るが……おまえたちは、どうするんだ?」
副団長の言葉に、すかさずリュシェルフィーダが「私も宿舎に戻ります」と、真面目くさって応える。――そりゃ、グラッドがおまえの帰りを待ってるもんな。早く帰っていちゃいちゃしやがるがいいさ。
「セルマは?」
「腹も減ったし、街に出て何か食べにでも行くかと……」
「「――はあ!?」」
途端、二人から声を揃えて“何を言ってるんだこの馬鹿は?”とでも言わんばかりの視線を向けられた。
「え? なに、俺、なんか変なこと言った?」
「君ってヤツは……」
眉間に皺を寄せて、リュシェルフィーダが呆れたように呻く。
「王都の夏至祭の夜がどんなものか、知っていて言ってるのか……?」
「いや、全く知らねーけど? だから、少しくらい祭り見物してこようかと思って」
そして、再び二人揃ってタメ息、とても深々と。――何なんだ一体?
「セルマ……今夜の王都は、無法地帯だぞ」
今度は副団長が、重々しく口を開くや、そんな物騒なことをのたまってなどくださりやがる。
「夜は、男神と女神の逢瀬の時間だ。――つまり、“そういう意味”で、誰の袖を引いてもいいことになっている」
「えーと……それ要約すると、『夜、出歩いたら襲われるぞ』と……?」
二人揃って、こっくりと首肯、深々と。
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