【後編】

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 団長が戻ってくるのを待って、お開きになる前に、俺たちは夜会の場から引き揚げることになった。  自分の屋敷に戻るべく馬車に乗り込んで去った団長を見送って、ようやく肩の力が抜ける。 「私も、今日はこのまま帰るが……おまえたちは、どうするんだ?」  副団長の言葉に、すかさずリュシェルフィーダが「私も宿舎に戻ります」と、真面目くさって応える。――そりゃ、グラッドがおまえの帰りを待ってるもんな。早く帰っていちゃいちゃしやがるがいいさ。 「セルマは?」 「腹も減ったし、街に出て何か食べにでも行くかと……」 「「――はあ!?」」  途端、二人から声を揃えて“何を言ってるんだこの馬鹿は?”とでも言わんばかりの視線を向けられた。 「え? なに、俺、なんか変なこと言った?」 「君ってヤツは……」  眉間に皺を寄せて、リュシェルフィーダが呆れたように呻く。 「王都の夏至祭の夜がどんなものか、知っていて言ってるのか……?」 「いや、全く知らねーけど? だから、少しくらい祭り見物してこようかと思って」  そして、再び二人揃ってタメ息、とても深々と。――何なんだ一体? 「セルマ……今夜の王都は、無法地帯だぞ」  今度は副団長が、重々しく口を開くや、そんな物騒なことをのたまってなどくださりやがる。 「夜は、男神と女神の逢瀬の時間だ。――つまり、“そういう意味”で、誰の袖を引いてもいいことになっている」 「えーと……それ要約すると、『夜、出歩いたら襲われるぞ』と……?」  二人揃って、こっくりと首肯、深々と。
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