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本屋さんと子役あがり
ノガミ大学は都内にある。
そのため地方から上京する人達とは別に最初から都内在住の生徒と言うのも当然ながら多い。
今回の中心である「安野乗木」もまた後者の生徒の一人だった。
「ごめんください」
丁寧な挨拶をして、一人の女性が人魚書店の暖簾を潜る。黒髪の長髪で毛先までケアされている彼女の髪は艶めかしい。
彼女の名は安野乗木(のりこ)と言い、安野某という映画監督の娘である。父の影響で芸能活動をしており、同級生達からはお嬢様、安野嬢と言った呼ばれ方をしていた。
伊達に芸能人と言うだけあり彼女の存在感は小さな店内でも目立つ。ただ慣れた学生達は「お嬢様が本屋に来るなんて珍しいな」としか感じていない。
「どうかしましたか?」
「人伝に聞きました。人魚姫の魔女と呼ばれている方はいますか?」
応答に出た読子は「自分がそうだ」と言いかけたが、んぐぐとこらえた。直感で素直に動いても彼女には良くないと感じたからだ。
「んぐぐ───そのことですか。たまに勘違いして来る人がいるんですが、そんな人いませんよ」
「芸能人を茶化さないで。私の情報ではここの店主が人魚姫の魔女だってことまでは突き止めているんだから」
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