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「そういうとですか。とりあえず奥でお待ちくださいな」
「最初からそう言えば良いのよ」
高飛車な態度を取る乗木を読子は座敷に通した。
座敷に上がった乗木は先程までは加減していたとばかりにふんぞり返り、まるで早く来なさいと急かしている様子である。
そんな彼女を読子はお茶を出した途端になじった。
「粗茶ですが───ところで、先程は芸能人を茶化すななんて大見得を切っていましたけれど、そのわりには誰が店主かまではわからないなんて情けない情報網ですね。アナタ、安野さんよね? タイガードラマとか見ていましたよ」
「ええそうよ。アナタも私のファンかしら?」
「───またの名を『ゴリ押しの安野嬢』───」
「な!!!」
最初は子役時代をほめた読子に嬉しそうに微笑んでいたが、その後に言った侮蔑に乗木は顔を赤くした。
あくまでネット上で使われている悪意のある呼び方とはいえ、その渾名は今の彼女を的確に評価していた。
子役時代はコネと年齢のわりに器用だったことで大人気となった乗木も中学生になるとめっきり仕事が無くなっていたからだ。
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