本屋さんと子役あがり

3/5
前へ
/5ページ
次へ
 そんな彼女のセカンドブレイクを狙ってか、大学入学前から芸能事務所や父の後押しで猛プッシュをされ「子役から美少女への羽化」として売り出されてから一年半、そんなゴリ押しされる彼女の評判は上がるどころか落ち始めていた。  子役時代の器用さなど大人になれば通用しない。エゴだけが肥大化した彼女の曇った心では役者としてもテレビタレントとしても二流と言う言葉すら怪しいほどに力不足である。 「ネットで悪評が結構たっているけれど、あなたも薄々感づいていたのでしょう? それはそうよね、あれだけプッシュされていてもいまいちいい評判は聞かないし」 「あなたに何がわかるというのよ」 「確かにわからないわね。でも、だからこそあなたが人魚姫の魔女を求めたことくらいならわかるわよ」  ズカズカと普通なら言いにくいことを正直にいう読子に対して乗木は次第に威勢を失っていく。最初こそ虚勢を張っていたが、次第にその気力がそがれて言ったからだ。  読子のような態度を取られたことなど乗木には初めてである。文字通りにお嬢様として芸能界でも守護された立場だった彼女に面と向かって批判できる人間はおらず、視聴者の反応だけが彼女への不快感を示していたのだから。 「私はみんなに期待された通りにやっているだけなのに……なのになんで! なんで私ばかりあれこれ言われなければいけないのよ。私は悪くない、悪いのは私をうまく使えない奴らの方よ」     
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加