冥土の土産

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冥土の土産

《自分なんかにお迎えがくるのか?》 そんな疑問が心の中にあり続ける人生だった。 「自分の死が想像できない」という、生きることに前向きな意味ではない。 いざ天に召される、その大事な瞬間に、先祖なり親戚なり友達なり、血族的にもしくは社会的に近しい存在のなかで、自分みたいな、こんな取るに足らないつまらない魂なんかをわざわざ下界まで迎えに来てくれる殊勝な人がいるのか?(いや、いない。いるとは思えない) このような、非常に暗い疑問である。 法に背くようなことは何一つせず、真っ当に生きてきた。 そして、他人に優しく生きてきたつもりだ。 でも。 世界の優しさを信じることができない人生だった。 世界の(ことわり)から忘れられた存在……大いなる命の輪から外れてこぼれ落ちたのに、そのことに気づかれない塵のような存在。綻びの先っちょの糸くずのような。 自分はその程度の人間だと、無意識に悟っていたから。 どれだけ親に大事に育てられても、そこそこ仲の良い友達がいても、幼い頃から常にどこか孤独を感じてきたから。 孤独死に対して何の感傷もないほど、孤独でいることが普通だった。
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