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       ――あー、もう、やってられっか!!  寝台の上から、敷布と掛布を引っぺがし、それらの端と端を解けないよう固く結び付けると、敷布の反対側の端を寝台の脚に縛り付けた。  掛布の端を手に握り、その足で窓へと向かう。  既に、こっそり香炉へ放り込んだ催眠作用のある薬草が効いていて、周囲の人間は皆、眠りの淵に在る。誰にも見咎められることは無い。  そっと窓を開くと、その向こうへ、手にしていた掛布の端っこを投げ捨てた。 「…よし、準備完了」  後は、この布を伝って窓から逃げ出すだけでいい。  ――その前に……、  やおら踵を返して部屋へと取って返すと、寝台の横にある棚の引き出しから、護身用の短刀を取り出した。  腰まで垂れる重く長い自分の髪を一括りにすると、ひと思いにバッサリ根元から切り落とす。  握った手の中に残された、その長い髪を、寝台の上へ無造作に撒き散らした。  ――うん、これでいい。  初夜を迎えるべき花嫁が髪を切り落として失踪、なんて、どこまでも恥さらしな醜聞にでもなればいい。  そして、用意しておいた僅かばかりの私物を入れた袋を背に負うと、そのまま布を掴んで窓の外へと身を躍らせた。  ――本当に……一体、どうしてこんなことになったのか。  それは、あまりにも急すぎる実父からの呼び出しが発端だった。
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