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戦争のために狂わされていた我が国の内政も、徐々に立て直されつつあり、ようやく新たな王も立てられた現在。
しかし、その全ての中心に居たのは、我々を滅ぼさんとしたユリサナ軍の総司令官であった、ユリサナ帝国皇太子シャルハ殿下であったことは、誰の目にも疑いようは無いだろう。
王権を奪われた我が国の、実質的な裁定者は、今後ユリサナ帝国から派遣される監督官となる。
現状、その監督官として我が国に駐留し政務に当たっているのが、そのシャルハ殿下だったのである。
殿下こそ、現在のサンガルディア王国で最も権力を握っている御方、と云っても、決して過言ではないに違いない。
そのシャルハ殿下と誼を結び、あわよくば三公爵家にも取って代わらんという、大方そんな身の程も弁えぬ大それた野心でも抱いたのだろう。あの強欲な父のことだから。
しかし当然のことながら、殿下に阿り誼を結ばんと企んだのは、何も私の父だけではなかった。
同じく強欲な有力貴族たちは、やはり一様に同様の企てを抱いていたのだろう、こぞって自分の娘を殿下に差し出そうとしていたようだ。
そんな貴族たちに対して、シャルハ殿下は、こう告げたのだという。
『頭の足りない若い娘などに興味は無い。どうしても私に妃を娶らせたいならば……そうだな、美しいことは勿論だが、せめて年齢は二十五歳以上の、男と対等に渡り合える知識を持った女であれば、言うことは無いな。そのような娘がいるならば喜んで貰ってやろう』
――それ、遠まわしに断られてんだよ! わかれよ、それくらい!
聞いた途端、即座に叫びたくなったよね。それを。
なぜなら、妃となるべく献上される娘は、処女であることが絶対条件なのである。それは、我が国でもユリサナでも変わらない。もしそうでない娘を偽って献上したとなれば、不敬を問われて投獄されてもおかしくはない罪となるのだから。
そして、我が国の貴族の娘の結婚適齢期は十五~六歳、ってところだ。よっぽどの事情や身体的欠陥でもない限り、遅くとも十八歳までには嫁に出されるのが普通である。
つまり齢二十五にして未通の娘など、この国の貴族社会に存在していようはずもないのだ。
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