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解散総選挙、渋谷駅前で演説中の総理大臣を拳銃で狙撃未遂。
犯人の名前は松井タカ彦、51歳、自称弁護士。犯人は逮捕時「オレは弁護士だ。オレの話を聞いてくれ」と絶叫。所持していた拳銃はオモチャのエアーガンと判明。政治的、思想的信条は現在調査中。
「佐藤さん、又ネタ探しで留置所うろついてんですか?オレが上の方に怒られますよ」
「ゴメンネ、今週中に記事一本入れないと契約切られるんよ。又コッチもいいネタ回すからさ」
「ホントですか~?ケチな土建屋ネタじゃなくて芸能人の麻薬絡みや、政治家の汚職ネタ頼みますよ~」
「大きなヤツ上げてもイイけど、お前扱いきれんのか?ところで昨日捕まった収監中の松井ってどんな奴」
「ああ松井タカ彦ですね。大阪市出身、1年前に東京に出てきて現在は都内のネットカフェを転々としています。本人が弁護士と言ってましたが、照会しまても登録も記録もなし、自称弁護士と云うヤツですね。オモチャとはいえ総理大臣に銃を向けたんですから、何かしらの思想か宗教が絡んでるかとみましたが、今の段階では何もナシのノンポリノンカルトです。落ち着きがなくセッカチそうだったのでクスリしてるか調べましたが、血中反応は何もナシ。普通に喋ってくれるんですが、厳しく攻めても優しく攻めてもかんじんのトコロ、総理に銃を向けた動機は話してくれませんね。普通ではないんですが、とにかくイイ人ですね」
「イイ人?何それ、昔、草なぎ君がやってたドラマみたいな人なの?」
「善人だったら総理に銃なんか向けませんが、イイ人と云うかトニカク悪人ではないんですよ。さっさ早くやって下さい。署長には許可とってますが、2時間だけが佐藤さんのインタビュー時間です。会話内容は録音します。得られた情報はこちら警察が優先使用します。お願いします」
「ああ」
取り調べ室に入ると。松井は机に突っ伏していた。何かを口ずさんでいる様だった。
私は入り口横の壁をコツコツとノックする。
「松井さん、松井さん、宜しいですか?」
「ハイッ?」
松井は机から顔を上げた。
「こんにちは、ワタシ週刊誌で記者をやってる佐藤と申します。松井さんが話を聞いて欲しいと云う事なので、取材をさせて貰う為に来ました。よろしくお願いします」
「お願いいたします」
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