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松井は立ち上がって挨拶した。 51歳相応の熟年、中肉中背165㎝位、前頭部と頭頂部が薄くなったごま塩頭を短く刈り込んでいる。皮膚が弱いのか紫がかった顔、?はこけ魔法使いの様な鼻、しゃくれた顎でクリッとしてるが少し釣り上がった瞳、コブシ一つが入りそうな大きな口で唇は薄い。ヨレヨレの白ワイシャツにヨレヨレの黒スラックス、靴は1足2000円位の黒いビジネスシューズ、靴はピカピカに磨き上げられている。 「記者さん、なんでも聞いてくれるんですか?」 「ハイ、インタビューできるのは2時間しかありませんができる限り聞いていきたいと思います。私が知りたい事も教えて下さいよ」 「雑誌やネットに載りますか?」 「できる限り要望に沿いたいです」 私達は取調室の固いパイプ椅子に座り腰を落ち着けた。対面してスグだが、言われてた通り松井は落ち着きが無いようだ。終始貧乏ゆすりをして体や足が揺れている。皮膚病だろうか頭や顔面や首筋を掻き毟り、白い粉が机や床に落ちている。それに加え、手の平全体で顔を上から下へ何回も拭っている。 「松井さん、渋谷で捕まった時『俺は弁護士だ』と言われてたそうですが、何処を調べてみても松井さんが弁護士だという記録はないのですが」 「私ね弁護士なんですよ、過去に弁護士事務所で働いていた事もありますし」 「弁護士資格は……」 「クレジットカードの過払金請求の弁護士事務所で、電話受付と書類作成をしていましたよ。クレジットカードの債務者と面談したり、弁護士先生のカバン持ちしたりしましたね」 「あの~、松井さんは弁護士の資格は持っているんですか?資格がないと弁護士とはいえないんですが」 「いえいえ、弁護士試験を受験する為に毎日法律の勉強をしていますよ。わたくし、今回こんな状況となりましたが無罪放免と成りましたら、改めて弁護士試験の勉強をしようと思います。弁護士資格があるからではなくて、弁護士に成りたい情熱があるから私は弁護士なんですよ」 「そうですか、素晴らしいですね。弁護士活動頑張って下さい」 「ありがとうございます」
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