押し入れ

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 従姉妹は押し入れに閉じこもった後いなくなった。私の証言を最初はみんな信じてくれなかったけれど、一緒の部屋にいたのを他の従兄弟達の何人かが見ていて、部屋から従姉妹が出た様子がないことが判明し、ようやく私の話は半信半疑であっても信じてもらえることとなった。  この日以来、いまだに従姉妹は行方不明のままで、親戚の誰も従姉妹のことを話題にする者はいない。それでも、法事で祖父母の家に集まると、やはりいなくなった従姉妹のことが意識に甦る。  年長の従兄弟達の子供が出入りしているあの部屋。あそこの押し入れで従姉妹は消えた。 「◯おねーちゃん! ちょっと来て!」  ふいに従兄弟の子供達に声をかけられ、私は手を引かれるままにあの部屋へ入った。押し入れの前に連れて行かれて戸惑っていると、一人が押し入れを指差した。 「さっき押入れを開けたら、中に知らない女の子がいたんだ。その子が、◯おねーちゃんを呼んで来てって言うんだよ」  私を名指しで呼びつける、この子達が知らない女の子?  どくんと、心臓が跳ねた。  いるの? この押し入れの中に従姉妹は今もいるの? そして私を呼んでいるの?  あれから十年以上が経っている。従姉妹が傍から見て子供のままなのはありえない。もしそうなら、私はとんでもない何かと対面することになる。でも…。  強い恐怖とうっすらとした期待が胸に広がる。その感情に導かれるまま、私は押し入れの襖に手をかけた。 押し入れ…完
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