押し入れ

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押し入れ

 もう十年以上も前、法事で田舎の祖父母の家に集まった。  従兄弟達もみんな来ていて、男も女も関係なくわいわいやっていたけれど、中でも私は、同じ年の従姉妹と始終一緒にいた。  ご飯も布団も隣同士。お風呂だって一緒。でも、誘われてもついて行けなかった場所がある。それが押し入れの中だった。  従姉妹はかくれんぼ好きで、狭い場所が大好き。でも私は、狭い場所はともかく暗い場所がとっても苦手で、大好きな従姉妹に誘われても、押し入れにだけは入らなかった。  怖いことなんてないよと言いながら、従姉妹が私の手を引く。でも押し入れの中のこもるような暗さを見てしまうと足が竦んで、私はどうしても押し入れに入ることができなかった。 「弱虫ね。こんなの全然平気なのに」  押し入れの中でそう笑い、従姉妹は自ら押し入れの襖を閉めた。  たった一枚の襖に遮られただけで、押し入れの中の従姉妹の気配は完全に消えた。声をかけても返事はないし、物音などさらにしない。  ただ息を潜めているだけ。それは判っているけれどたまらなく不安が募り、私は押し入れの襖を開けた。  そこに従姉妹の姿はなかった。  恐怖を感じながらも押し入れに入り、どこかに隠れていないか探す。それでも従姉妹は見つからない。  半べその私が押し入れ内でごそごそしているのを他の従兄弟達が見つけ、理由を聞き出し、大人も加わって従姉妹を探したけれど、結局従姉妹は見つからなかった。
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