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浅野美留久はショップの店員。朝早く出勤して夜遅く帰る毎日でマンネリ化を感じていた。好きな趣味は音楽と猫。楽しみはスマホで猫の動画を見ることである。特に可愛い猫の動画が大好きで楽しみにしていた。
ある日、会社から帰ってきて、ビールを飲みながら、子猫の動画を見ていると白い子猫が暴れていて、押さえようとしたのか、飼い主の顔が出てしまった。イケメンで30代前半くらいの青年。しかもその男性は猫のことをミルクと呼んでいた。まるで自分の名前を呼ばれているようできゅんとしていた。
「素敵な方だわ、運命感じちゃった」
それから、数日後、電車に乗っていたら、同じ車両にあの動画の青年が乗ってきた。そして美留久の隣に座ったのだ。美留久の顔は赤くなった。
男性はスマホを見ていた。何やら自宅の猫の行動が分かる機能のスマホらしい。
「あっ、美留久、駄目だろう、そんなことをしたら」
「はい、すみません」
つい、美留久は返事をしてしまう。青年は驚いていた。
「うちの猫なんです。可愛いでしょう?」
「さっき、ミルクっておっしゃっていたので、自分かなって。私、浅野美留久と申します」
「それは失礼しました。私は河合徹と申します。この子は河合ミルクです」
「かわいいミルク?」
二人はお互い顔を見合わせて笑った。
「この子はある日段ボールで捨てられていたんです。雨に濡れて震えていた。可哀想なんで、連れて帰って、冷蔵庫にあった牛乳を与えたんです。そしたら旨そうに飲んでいたんでミルクと名付けました」
「可愛い! 本物見たいなあ! 私、猫大好きなんですよ」
「じゃあ、今度、うちに来て下さい。ミルクに会ってやってください。喜びますよ」
「えっ、まだ初対面なのに自宅に行っていいんですか?」
「あっ、そうか、じゃあ、近くの公園にしましょう。ミルク連れてくんで」
「はい、是非。あのう、河合さんは、ミルクの動画を投稿された方ですよね」
「あっ、見てくれてたんだ。恥ずかしながら。ミルクが暴れだしたんで、停めようとしたら、俺まで映っちゃったんです。お見苦しいものをお見せしちゃってすみません」
「いいえ、素敵だなって思いました」
二人は真っ赤になった。そしてミルクの恋は始まった。
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