何よりも高価

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続いて、【男性限定一名様】の文字が目に入り、まるで自分のことを言われているのではないか、と錯覚した。困り果ててた所に、この救済はまさに神の粋な計らいだ。 「すみません!!ここ借りたいんですけど!!」 掲載されていた不動産屋の扉を開けるなり、そう食いついた。従業員達の驚いた表情が一気に自分に向いても気にしない。 空いてる席に強引に腰掛け、詰め寄った。 「あの、男性限定一名様の……!!まだ空いてますか!?」 「え、えぇ……順番にご案内いたしますので……少々お待ち頂けますか……?」 そんなこんなで、約1時間近く契約内容を確認したのち、引越しは明日へと決まった。 僕は終始上機嫌だった。 聞いたところ、どうやらここは男性限定4名のシェアハウスらしい。 間取りも十分な広さがあり、築年数も3年と浅い。 内装の写真を見せて貰ったが、モデルルームのような綺麗さで驚いた。 ……ここまで完璧なのに、どうしてなのか。 疑問を持たないほど馬鹿ではない。 僕の問いに従業員は、少し目を泳がせてから、声を潜ませた。 「……詳しいことは我々も分からないんですよね……ただ、この家主さんが相当なお金持ちらしくて。……なんでも、若い男性の可能性を潰したくないとかなんとか……。噂では、その方もここに住まわれているらしいですよ」 「え………もしかして、住んだらその方の会社で働く、とかですか?」 それはそれで有難いと思いながらも、得体の知れない会社で働くのは気が引ける。 無料、というくらいだから、ブラック企業である可能性は十分にあるわけで。 けど、その心配は杞憂に終わった。 「……いえ、そういうわけでは。懐の広い方ですから、頼み込めばそうさせて貰えるかもしれませんけど」 首を振った従業員にほっと胸をなで下ろす。 ならばその時にでも考えよう。 とりあえず、足速に契約を済ました僕は、従業員の人にお礼を告げて、店を後にした。
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