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次の日。
「思ったより……立派だ」
示された地図の通りに歩いていくと、かなり立派な家がひとつ、ぽつん、と建っていた。
少し離れた場所に他の家も見えるが、近くに住宅らしきものはない。
シェアハウスということもあって、近所迷惑にならないように設計されているのかもしれない。
家主は相当の金持ちらしいし、それくらいしていそうだ。
ゆっくりとした足取りで、心を落ち着けるように玄関へと進む。
たったひとつのキャリーケースを右手に、僕はインターフォンを押した。
『……はい』
「あ、あの……今日からお世話になります、相馬アオイというものですが……」
スピーカーから聞こえた声は低く、掠れた男の声だ。
この人が家主なのかと思うと、少し怖くなってしまうくらいには、不機嫌さが全面に出ている。
『あぁ……今開ける』
言うが早いかカチャリと、ロックの解除された音が鳴り、自動で扉が開く。
田舎暮しだった僕にとって、まるで近代未来に来たかのような感覚に陥ってわくわくした。
「失礼しまーす……」
扉を開けると、そこには既に3名の男の人が立っていた。
「いらっしゃい、相馬アオイくん」
「ど、どうも」
声をかけてくれた男性は、柔らかな笑みを浮かべ、 肩まで伸ばしたアッシュブロンドの髪を耳にかけた。
(外国人……?ってわけでもなさそうか……)
発音にも違和感はないし、おそらく日本人だとは思うが、どこか現実離れした儚さのようなものを持ち合わせている。
線が細く、中世的な見た目であるあたり、女性にモテそうな印象を受けた。
(とりあえず、優しそうな人がいてよかった)
そう安心した所に、ひょっこりと顔を見せた青年は、僕と同い年くらいのまだ幼さの残る声で食いつく。
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