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「ちょっとアキラ!人には牽制したくせに、抜け駆けはないんじゃないのー?」
「そんなつもりはなかったんだけどね」
僕はよろけるようにその場に崩れ落ちた。
そんな僕と彼の間に立ちはだかったのは、ヒカルと呼ばれていた青年。
頬を膨らませてむくれる彼は不満があるようだ。
しかし、この状況に関してはなんの疑問も抱いてそうにない。
どうやら、自分一人が仲間はずれらしい。
ひやり、と背中に汗が伝った。
ここはやばい。
このままここに住むことになったら、何をされるのだろうか……考えただけでおぞましい。
「あ、あの……僕……やっぱり……」
震える声で必死に声をかければ、3人の目線が一斉に僕へと移った。
視線を受け止めるほどの度胸は無くて、僕はへたりこんだ床を見つめながらぽつりと零す。
「ここ住むのはやめ……」
「おい、新入り」
かき消すように重なった声に全身が強ばる。
どきどきと心臓がうるさく鳴っては、声が上手く聞こえなくなりそうで、それがまた不安と恐怖を引きずり出す。負の連鎖だ。
その時突如、再び上げられた顎に、僕の瞳に映るのはーートキ、そう呼ばれた彼だけになる。
弧をえがくようにして、うっすらと開かれたその唇は、触れた時とは違って少し濡れていた。
それが再び押し付けられるまで、あと5秒もない。
「……挨拶ってのはこうするんだ」
「んぅ…っ!」
下唇に吸いつかれ、変な声が漏れた。
そこを彼の舌が隙間をねって口内へと侵入する。
上から覆いかぶさる口付けは、逃げることも許されない。ぐちゃぐちゃと唾液を掻き回すように舌が動く。
苦しくて、でもどうにも出来なくて。
上を向かされていた僕は、そのまま溢れんばかりの唾液を体内へと流しこまれた。
ごくり、またごくり、と喉が鳴る。
(こんなの……きもちわる……)
とてつもない不快感が僕を襲って、喉を掻きむしりたい衝動に駆られる。
食道が燃えるように熱い。
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