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唯一いつも通りではなかったことは放課後の帰り道にあった、近所の仲の良いおばさんに、俺のクラスメイトであり近所に暮らしている五月女伊丹(さおとめいたみ)という女子がもう長くないらしいと聞いたことだ。しかしこれも違うと思った、俺は伊丹が死にそうだとしても心が動くはずがないのだ。話したことも無いのだから。
それくらいだ。答えは見つからず釈然としないので、俺は年上の友人の占い師をやっている日比野頼心(ひびのらいしん)の元へ向かうことにした。
この男は俺が困って相談すると必ずヒントをくれ、俺を迷いや苦しみから助けてくれるのだ。
今回も頼ろうと思った。
道端で、占い・頼心と書かれた旗を掲げ、水晶や数珠等小物のたくさん乗った紫色のカーテンが掛かった長机があり、いかにも占い師をしているという雰囲気を出しながらいつも通り頼心は暇そうに雑誌を読み座っていた。
俺に気付いた頼心はよぉと俺に向かって話し掛けた。暇潰しの対象の一人が来てとても嬉しそうだった。
俺は「ちょっと聞いてくれるか、今日は何故か胸が熱いんだ」と言った。
頼心は「それは恋だ」と即答した。
俺は「は?」と返す。頼心はそれに対して「ちょっと待ってな、ちゃんと占うから」と言い水晶を自分の目の前の布の上に置いた。
頼心は水晶を擦りながら目を細めて水晶を眺める。
頼心は雰囲気作りの為水晶を見るが実際にはこの男はそんなものが無くても人を見るだけで人の心や悩みを言い当てる。
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