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その日から、俺は心を入れ替えて、誰に読ませても恥ずかしくない小説を書き始めた。俺の全身全霊を小説に刻み付けてやる。
けれど意気込みとは裏腹に一行も書けなくなった。
一行書いても、ものすごく陳腐な言葉に感じて、すぐに削除してしまう。
俺は何も書けなくなった。
ただの一文字も書けなくなった。
こんなことは初めてだった。
何十日も何か月も書けなくなった。
俺から小説をとったら、なにも残らない。ただのクズだ。人間の形をしたクズだ。
俺はどうすればいい? 何ができる? 何もできない。小説しか書けなかったのに、俺は何も書けなくなった。
何かが間違っている。
生きている価値なんてない。
俺の心は不穏な暗闇に食いつくされた。
もう生きているのも嫌になる。
俺は何も悪くない。社会や大人のせいだ。
こんな社会は間違っている。
俺が正してやる。
目にもの見せてやる。
俺はキッチンで包丁を取り出して、普段から口うるさかった母親をめった刺しにする。
そして、血の滴る包丁を手にしたまま、近所の小学校に向かう。
こんな社会は間違っている。
なんで俺だけこんな目に合うんだ。
俺は間違ってないぞ。
いまから俺が証明してやる。
運動場から子供たちの笑い声が聞こえてくる。
俺はにたりと笑って、学校に侵入する。
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