作家になりたいぼくは……

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 書けねえ。  こんなはずじゃ、こんなはずじゃなかったのに。  俺は一体どうしたんだ!?  俺はまじで焦っていた。  俺はとっくに作家になっているべきはずだった。  作家になるべき人間のはずだ。  コミュニケーション能力は一切なくて、友達もひとりもいなくて、人間としては失格かもしれない。  でも俺には小説を書く力がある、妄想力には誰にも負けない、はずだった。  それなのに、それなのに、苦心して書き上げた小説を新人賞に応募しても軒並み落選、なんの連絡もない。  焦った俺は小説投稿サイトのエブリスタに目をつける。  頻繁にコンテストも実施されているようだ。  俺は会心の自信作を書き上げ、妄想コンテストに応募してみる。  妄想コンテストぐらいなら余裕で受賞できるだろう。  それなのに、それなのに。  エブリスタの妄想コンテストさえ受賞できない。  受賞できないどころか、エブリスタに小説を投稿してみても、スターがもらえない。スターがもらえないどころか閲覧数もゼロだ。  閲覧数ゼロ、スターゼロ、来る日も来る日もゼロばっかりだ。  俺の小説は誰よりも面白いはずなのに。  みんなバカばっかりだ。 小説投稿サイトのエブリスタなどをうろついている人間は、本物の小説を見抜く力がないんだ!  俺はそう思い込んで、自分を慰めようとした。  俺はエブリスタに投稿した自分の小説を読みなおしてみる。  はっきり言って、くそだった。  甘ったるい感傷とありきたりの展開のオンパレード。  くそだ! なんだこれ!  不朽の名作だと思い込んでいた自分が心底恥ずかしくなった。
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