秘められない想い

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「お願いします!そのやり方、教えていただけませんか?」 真剣に面と向かって頭を下げられたら、遥香の方も見捨てるわけにもいかなくなった。遥香がぎこちなく頷くと、店主はニッコリと嬉しそうな笑顔を見せた。 「あの…、佐山晋也と言います。良ければお名前を教えてもらえますか?」 「私は、佐川遥香と申します」 「『佐山』と『佐川』か。似てますね」 その晋也の言葉の響きと優しい表情は、遥香の心を一瞬で(ほだ)してしまう力を持っている。遥香も警戒することなく和やかな気持ちになって、コスモスの水揚げの仕方を教えることができた。 遥香の花の扱い方や知識のあることに、晋也は驚いてその訳を尋ねてみる。 「実は、学生時代にお花屋さんでアルバイトをしていたことがあって、それからも趣味でアレンジメントなんかも習っていたので…」 それを聞いて、晋也の目がいっそう輝いた。 「俺は花屋なのにアレンジメントなんてできなくて、注文が来ても今は断ってるんですが……。その技能を生かして助けてくれませんか?無理なお願いかもしれませんが、どうか人助けだと思って。もちろんできる範囲で構いません。きちんと賃金もお支払いします」
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