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制作をしてもらった後は、お茶を出して、少しばかり話しもできるまでになった。そうやって少しずつ親しくなればなるほど、晋也の想いは降り積もっていく。そしてその分、切なさも募っていく。
そんなどうしようもない想いを持て余していた頃のことだった。いつものように遥香がコスモスを買いに来て、店を出て行こうとしていたとき、時折勧誘に来る保険の外交員が店に入ってきた。
「あら!佐川さん。お久しぶり。お変わりないですか?」
外交員は、用のあった晋也よりも先に、遥香へと声をかけた。
「はい。おかげさまで」
「もう、三年が経つけど、どう?落ち着かれた?」
その問いに遥香は答えることはなく、困ったように微笑むだけで逃げるように店から出て行った。
「佐川さんとお知り合いなんですか?」
遥香のことが気になる晋也は、挨拶よりも先に外交員に詮索する。
「ええ、お客さんなんです。ご主人が亡くなられたときにも、お世話をさせてもらったんです」
外交員がそう説明したのを聞いて、晋也の心臓が口から飛び出してきそうなほど跳ね上がった。
「……佐川さんのご主人は、亡くなってるんですか?え!?三年前に?!」
外交員は晋也がその事実を知らないことを気取って、思わず口をつぐんだ。
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