いつも側に…

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尚人とは一緒にいるのが当然だった。ずっと尚人との日々が続いていくものと思っていた。 そんなある日、尚人が出張していたときのことだった。 「出張先での移動中。現地の過激派による爆破テロに巻き込まれて、佐川君が命を落としたらしい」 尚人が勤めていた会社から連絡があった。何度尚人へ電話をかけても通じなかった。メールを打っても返事はなかった。 それでも、遥香は信じなかった。いつかは帰ってくると信じていた。だって、息をしていない尚人の亡骸をこの目で見ていない。 だけど、いくら待っても、尚人は帰って来なかった。数ヶ月が経ち、戻ってきたのは、尚人の壊れたスマートフォンと土や血で汚れたパスポートだけ。 遥香を取り巻く全ては、刻々と時を重ねていくのに、遥香の時間は止まってしまった。起きているのか眠っているのかも分からなくなって、仕事にも行けなくなった。 ただ、何も感じられないのに、涙が次から次へと溢れてきて止まらなかった。 心配した両親が、実家へ戻ってくるように言ってくれた。だけど、遥香はこの二人の〝家〟を離れたくなかった。もしかして、尚人が戻ってきてくれるかもしれないから……。
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