ラベンダーの朝

5/6
前へ
/27ページ
次へ
それから、晋也はただひたすら再びの奇跡を待ち続けた。再びあの人が来た時のために、特にコスモスは切らさないように気をつけた。 すると、その五日後にその人はその人は再び現れた。 「あの、コスモスをください」 そう言って、また同じようにコスモスを買っていく。見た感じでは、仕事帰りのようだった。この人の帰り道に、ちょうどこの店を持てた幸運を、晋也は心の底から感謝した。 前回と同じようにドキドキしながら包装し、代金とおつりの受け渡しをする……。だけど、それだけ。時候のこと、肝心な花のこと。晋也はそんな取り留めのない話題を投げかけることさえできず、それだけの接触で終わってしまった。 しかし、また幸運は訪れる。また五日後にその人が来てくれた時には、晋也はもう〝運命〟だと思った。 再びコスモスを求めてきたその人に、晋也は渾身の勇気を振り絞って声をかけてみた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

167人が本棚に入れています
本棚に追加