コスモスが好きな人

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大学を卒業して二年が経った頃、どちらが言い出すでもなく、自然に「結婚しよう」ということになった。 まだ若くて貯金もなくて、豪華にはできなかったけれど、友達や同僚たちに祝福されて、とても幸せな結婚式を挙げた。 そして、二人は夫婦となって五年が経ち、今に至る。尚人はずっと遥香のそばにいて、とても穏やかに遥香を愛してくれている。 明るい日差しが射し込んで、爽やかな風が入って来るダイニングの窓辺の席が、尚人の定位置。いつもそこから、遥香へと温かい眼差しを注いでくれている。 『あ、コスモスだ。綺麗だね』 買ってきたコスモスを花瓶に生けて、遥香がテーブルに置くと、そこにいる尚人が微笑んでくれる。尚人が喜んでくれると、遥香も嬉しくなってくる。 「尚人くん、この花好きだったでしょう?」 『うん、好きだよ。ありがとう。遥香』 そんな言葉をくすぐったく感じながら、遥香も微笑んだ。 そんなふうに、尚人との日々はとても穏やかで優しくて、遥香はとても幸せだった。それが特別でかけがえのないものだと、遥香が忘れてしまうくらいに、尚人の存在はさりげなくて、いつも大きすぎる幸せで遥香を包み込んでくれていた。
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