壱、 嗚呼、憧れの混成弓道部

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壱、 嗚呼、憧れの混成弓道部

    午後の授業が終わるとすぐに、昇降口で靴を履き替え、右手側に駆け出す。正面に弓道場の敷地が見えた。駐輪場と並んで小高い丘の端に位置するため、がけ側には木々が生い茂っている。グラウンドのほうから、バットが硬球を打つ甲高い音。音楽室から聞こえてくる吹奏楽部のパート練習。そして、この弓道場で、あづちにかかった的を矢が瞬時に射抜くときの痛快な響き。  射場の反対側、的場を一瞥し、そのまま道場の入り口に向かう。  屋根のついた道場に先輩たちが袴姿で並んでいた。  高校の入学式を終えて四日経ち、さっそく部活動の見学と仮入部が始まる。  道場前で男女二人の先輩が僕たちを迎えてくれた。  息を整え、すでに集まっていたほかの新入生とともに先輩たちの前に並ぶ。混成弓道部を見学に来た新入生は男女合わせて十五人ほど。中学時代からの友人同士と思われるグループもいたけれど、多くは個々の意志で集まっているようで、互いにどう声を掛け合ってよいかわからない。皆きまりが悪そうにもじもじとしている。かく言う僕も、元来の人見知りのせいで、足元から視線を上げられなかった。そんなとき、背後から軽快なスニーカーのステップが聞こえた。     
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