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東はいつも、誰にでも明るく挨拶をする。その中には当然、真人も含まれていて、いつしか、真人とも目が合えば声をかけてくれるようになった。まるで夢のような毎日だ、と思った。 もちろん、東と特別な会話なんてしたことはない。それでも、一方的に見つめるより、同じ空間の中に存在している何かとして認識されることがこんなにも嬉しいなんて思わなかった。
見つめているだけで幸せだったのに、人の欲望というのはこれほどまでに貪欲だったのだろうかと、思い知らされる。けれど、もうこれで十分なのだ。
卒業してから、東の中に、柳井真人がクラスメイトとして記憶の片隅に残ることができるなんて、真人にとってこの上ない幸せだった。
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