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今日の朝も、いつものように図書室に立ち寄った。
授業の予習をしてから、借りていた本を返すためにカウンターに立ち寄る。その間も、ちらちらと窓の外に目を向け、練習している風景を目にする。図書室のある校舎からが一番グラウンドを見渡せるが、真人たちの教室からでは方角的に見えない。
東がずっと練習していてくれるなら、いつまでだって見つめていられる。そう思いながら、いつものように教室に向かった。
図書室で一時間ほど過ごして教室に行っても、誰もいないことが多い。ただ今日は、教室の扉に手をかけたとき、話し声がしたので珍しいと思いながら、扉を開けると自分の机を二人の生徒が囲んでいるところを目撃してしまった。二人は、真人の机の中から何かを探していたようだった。
「あの……」
あまりにも不審な行動に、真人も思わず声をかける。振り向いた二人は、真人と目が合い、ぎょっとした顏になる。
「あ、これは……その……」
二人は慌てて、しどろもどろになり、手に持っていた教科書やノートを机の中に押し戻している。
「悪い悪い。ちょっとさぁ、数学のノートを見せてほしかったんだよ」
「そ、そうそう! ほら、今日提出じゃん? おまえやった?」
確かに、先週、プリントを渡されていて、それをノートに解いて提出という課題が出ていた。真人はいつ提出することになってもいいように、その日のうちに宿題をやってしまう方なので、あまり日付の感覚がなかった。
ノートを見せて欲しいなら、声をかければいいのに、本人がいない間に机の中を漁るなんて、あまり褒められた行動ではない。
それにこの二人の生徒はクラスメイトで、あまり素行の良くない生徒でもあった。数学の教科以外でも、課題を見せると、クラスメイトに半ば脅しとも受け取れる態度で接している光景を見たことがある。真人は、あまり主要科目のノートを置いていかないが、もしかすると今回のような余罪は彼らにあるのかもしれない。
それでも普段話しかけてくることのないこの二人が、困っていて自分を頼ってくれるのなら、と真人は机に鞄を置いて、数学のノートを取り出した。
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