恋していたい

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「おめでとう」 「ありがとう!」 結婚20年目を迎えたこの日、妻である佳也子(かやこ)はテーブルの真ん中に一輪の赤い薔薇を飾り、いつもより豪華な料理を並べた。 夫である弘和(ひろかず)はこの日のために買ったスパークリングワインをグラスに注ぐ。 19歳の息子と16歳になる娘は二人でお小遣いを出しあって、ペアのコーヒーカップをプレゼントした。 きれいで優しい母とかっこよくて頼もしい父は子供たちにとって自慢の両親である。反抗期を過ぎた子供たちはいつか自分もこんな家庭を築けたらいいなと思うように成長していた。 幸せな家庭は夫婦が努力して作り上げたもの。特に佳也子は弘和を愛することで家庭を大事にしていた。 愛してはいても、恋してはいなかったが。
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