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離別
「なあ。
俺、お祝いもらって、ないよな。」
門扉までの、長い道のり。
俺は、和樹と、連れ立って歩く。
「何の。」
「忘れたのか。
俺の合格祝い。
雄大、何もくれなかったじゃないか。」
「今更。」
俺の言葉に。
和樹は、思いっきり、不機嫌な顔になった。
「そもそも。
お前が、俺を無視したのが悪い。」
和樹は俺より、ずっと、背が高い。
当然、自然と、見上げるようになる。
ちょっと、むかつく。
「してない。」
「した、だろ。」
忘れてんじゃ、ねえ。
「合格した途端。
俺をお払い箱にしたのは、お前だろうが。」
「あれは、雄大が悪い。」
「はあ。」
何、言ってんだ、こいつ。
あんなに、ショック、だったのに。
怒りから、つい、声も高めになる。
「合格して。
これからって時に。
佳代のやつが・・・。」
何で、元カノの名前。
何で、ここで、でてくる?。
「人の家で、告って。
嬉しそうに受ける、お前も悪い。」
確か、佳代に、付き合おうって言われたのは・・・。
そう。
この家の玄関っ。
「見てたんかって。」
と、いうことは。
何だか、和樹が、気の毒になってきた。
「悪い。
気がつかなかった。」
佳代が好きだって、言ってくれれば。
いや、言われても、困るか。
「でもさ。
和樹の気持ち、全く伝わってないぞ。
あいつ、他に男ができたって、言ってたし。」
確かに。
今年になってからは、もう駄目かなって、思ってたけど。
社会人になってからも。
佳代とは、何とか時間をつくって、会っていた。
でも。
学生のころとは違い、共通の話題もなく。
更に。
銀行に勤めている、佳代と、公務員の俺。
世間で、言われているほど、公務員は、定時退庁はできない。
土日出勤もある。
夜や、休みの日に、会えないことに、文句を言われ。
だんだん、佳代に時間を合わせるのが、億劫になっていった。
話すことさえも。
「別れて。」
そう、切りだしたのは、佳代だった。
そんな雰囲気は、あった。
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