発令

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発令

「川瀬、ちょっといいか。」 今年は、知事選。 その場合、ほとんどの職員が、7月に異動する。 例年どおり、4月に異動する人もいる。 それでも、欠員補充など、ほんの一握りだ。 「4月から、秘書課ね。 それも、社長秘書。」 俺を、呼び出した課長。 食えない笑顔で、そう告げた。 「社長っ、ですかっ。」 俺たち県庁の人間は、内部では、知事、とは呼ばない。 社長や、G(governorの略)と呼ぶ。 「そう。 断る場合は。」 おお。 その選択肢が、あったか。 「今日から、3日以内に言うこと。 まあ、前に断った人が、いたけど。 結局、発令がでて。」 はい?。 「で、出勤しなくて。」 うわっ。 「そのまま、辞めたけど。」 あの・・・。 もしもし。 課長さん。 それはつまり、無駄って、ことでは?。 「まあ、社長秘書は、4人いるし。 いつも若い子が、1人、入るから。 4月の、知事選が終わるまでは、さ。 暇、だと思うよ。 までは、な。」 はあ。 さよう、ですか。 「発令は、4月1日付け、だから。 引き継ぎ、よろしく。」 課長ーっ。
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