映画

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支払いは、割り勘で。 和樹は、最初から、そう主張した。 男子高生の、家庭教師をしている、と聞いていた。 高校生の時は、やれ、ジュースをおごれ。 アイスをおごれ、など、うるさかったのに。 成長した和樹が、嬉しくもあり、寂しくもあった。 「この映画にしようぜ。」 そう言って、和樹は、スマホを俺に渡す。 「いいけどさ。 男2人で映画っていうのも。」 これまで、買い物とかも行ってたし。 今更、だけど。 何か、映画って、デートの定番というか・・・。 「雄大は、観たくないのか。」 強くそう言われ。 とりあえず、とう気持ちで、スマホを受け取る。 「あっ。 これは、もしや。」 画面を確認すると、今、ネットで話題になっている、単館上映で。 「観たい、けど。」 行きたいなって、知ってたのか。 おまけに。 今だと、時間も、ちょうどいい。 「じゃ、いいだろ。」 俺は、押しに弱いんじゃ、ないか。 最近、そう思っている。 それとも。 和樹だから、なんだろうか。 その映画館は、利用者しか通らないような、裏道にあった。 悔しいことに・・・。 評判どおりの、面白さ、だった。 ゴミ箱、どこだ?。 俺は、雄大に、外で待っているように伝えると。 紙コップやらを、捨てるため、館内をうろつく。 ほぼ、満員だったロビーも、まばらになっていた。 あったー。 何だ?。 ゴミを捨て、急いで、和樹のところに、戻ろうとすると・・・。 2人の女の人が。 和樹から、離れていくのが見えた。 「どうした?。」 俺は、そう言いながら、和樹に近づく。 「ん、何が?。」 「今、誰かと、話してなかったか。」 「ああ。 何か。 これから、どっか、行かないかって。」 うわっ。 「だから、断った。 まずかったか?。」 塀に腰掛けているためか。 俺の目を、覗き込むように、聞いてきた。 いや、別に、怒らないから。 そんな、不安そうな顔、しなくても。 「いいけど、さ。 それにしても。 今どきの子は、逞しいな。」 自分から、声をかけるなんて。 「でも、よかったのか。 断って。」 「何でだ。」 怖っ。 そんな、低い声、出さなくても。 「だって、さ。
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