第1章

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「お誕生日だから、おっきいマフラーを編んだんだよ! 今はまだ背がちっちゃいけど、キリンさんみたいに背が伸びて大人になったらだいじょーぶ!」  あのとき、ありがとうの五文字さえあれば。 「高校生になったら、その時は一緒にマフラーを巻こうよ!それで……それで……一緒に動物園に……」  あのとき、ありがとうの五文字が 「自慢のカップルになって……それで……一緒にウサギさんを抱っこして……ペンギンさんとシロクマさんを見て……」  あのとき 「動物さんたちにマフラーを巻いてあげて……それから……」  たったの五文字があれば 「マフラーなんていらない! お姉ちゃんなんて大っ嫌いだ!」  だいきらいなんて言わなければ  姉さん、ぼくが大人になってもマフラーはまだ余っています。背がちっちゃいぼくには少し長いけど、でも、それでいいんだ。  ある人を、もう一度お姉さんにしてあげられたから。  僕ももう一度、弟になれたから。  あったかいマフラーをありがとう。
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